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友達の家以上ビジネスホテル未満を甲府に 山梨と世界を繋ぐ甲府初のゲストハウス「BACCHUS KOFU GUESTHOUSE(バッカス)」の吉田氏にインタビュー

INTERVIEW 2016.03.02
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2015年夏。山梨県の中心、甲府市に初のゲストハウスが誕生した。その名も「BACCHUS KOFU GUESTHOUSEE(バッカス、以下、BACCHUS)」。脱サラをし、山梨の地で「恩返し」をしたいというBACCHUSの宿主である吉田陽祐(よしだ ようすけ)さんにインタビューした。
 
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一生ものの仲間がいる山梨でしたい「恩返し」

はなから勉強不足で申し訳ないのですが…そもそもゲストハウスってなんですか?
ゲストハウスは、アメニティサービスなどを省いた、一部屋に4人くらいまでが泊まれる相部屋を提供している、いわゆる素泊まりの宿のことです。バス・トイレは共同。海外ではバックパッカー(リュック1つで格安な宿を泊まりながら長期的に旅をする人)が利用する宿としてよく知られていますね。

BACCHUSのベッド数は現在16床。大きい部類に入ると思います。

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(もう一人の宿主の)野田さんとはどこで出会われたんですか?
大学時代、僕は山梨にいたんですけど。全然大学に馴染めなくて、救ってくれたのが写真部だったんですよね。そこの先輩のつながりで野田さんに会いました。野田さんは年上だったんですけど、意気投合して。すぐに年上と思わなくなりましたが(笑)10年前くらいの話ですね。

そもそも、なぜ野田さんとゲストハウスを開業しようと思われたのですか?
このBACCHUSは、野田さんが代表で、ここの宿主が僕なんですけれど、野田さんと僕が、学生時代にバックパッカーをやっていて。そこでゲストハウスというものを体験していたんです。1階にカフェがあって、2階は宿泊所。そこには様々な国の人が集まっていて。「ゲストハウス、面白いな」ってその当時から思っていました。そこに行けば情報が全て得られる。例えば、僕が行ったのは東南アジアだったんですけど、お金がないっていうのが最初入口で。節約できるのって宿泊代じゃないですか。そうなると必然的にゲストハウスを選ぶんですよね。むしろゲストハウスの方がガイドブックに載っていない情報が詰まっていました。「僕らこっちに行くけれど、君たちも一緒に行かない?」っていうのが、海外だとあり得てしまう。海外って非日常っていう枠の中にいるからかもしれませんが、こういう体験を繋げるのがゲストハウスなんだ、という印象は持ちましたね。

卒業した後は、僕は建築会社に就職しました。ちょうど4年間程働いたのですが、仕事していて、とにかくツラかったんですよ。それに面白くないなって思っていて。それで土日は、金曜の夜の仕事帰りにそのまま山梨に行って、普通に大学時代と同じように山梨の生活に浸る…そんな生活を自然にしていましたね。東京にいると仕事のことばかり考えてしまっていたので。

ふとある時、同僚に聞かれたんです。「土日何しているの?」って。僕が山梨に帰っていると伝えると、そういう場所があっていいねと言われました。その時に、ああ、この需要は東京にあるなって思いましたね。週末は山梨にいますじゃないですが、東京の人たちにとって山梨が「憩の場」というかオアシスとしてリフレッシュの場所となり得るな、と。そしてその当時、野田さんもちょうど仕事ツラいって言っていたんです。それで、冗談半分で、「2人で何かやるとしたら何やる?」って話をしたりしていました。きっかけは仕事のツラさだったけれど、「じゃあ、人生で何がやりたいんだろう」って考えることが多くなりましたね。例えば農業やろうとかそんな話を徐々にしていくようになりました。

その「憩の場」としての山梨では、いつも友達の家に泊まっていました。毎回、前の日に友達に確認するのが面倒だな、でもビジネスホテル高いし…と思っていました。その時に学生時代に経験したゲストハウスを思い出したんですよね。まさに友達の家以上ビジネスホテル未満。そういえば、ゲストハウスって甲府にないよね、だからやろうって。
そして速攻で会社に仕事辞めますって言っていました。当然、猛反対されましたけど(笑)

なぜこの山梨の土地を選んだんですか?
大学時代にできた仲間って一生モンじゃないですか。「なぜ山梨でゲストハウスをやっているんですか?」ってよく聞かれるんですけど。ここが好きになったし、「恩返ししたい」という気持ちが強かったので、僕としては自然なことだったんですよね。

ゲストハウス開業までのストーリーを教えてください。
まず、クラウドファンティングをしました。クラウドファンティングは先立つものがなかったので、とりあえず始めたんです。最初は多くの友人に協力してもらい、最低限の目標ラインはいけるように戦略を立てました。1週間目で50万円をすぐに達成することができたので、注目度も上がり、それ以降は友達以外の方からも集まるようになってきました。PR効果も考えるとやっていてよかったかなと思います。特にページ作りはこだわりました。

住みながらリノベーション、そして「破壊&飲み会」へ

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物件自体はすぐに決まったのですが、決まるまでの道のりが長かった。山梨でどんな人が働いているのか、観光に来ているのか等は調査したりしてたんですが、例えば事業計画どうするか、資金面をどうするかは全然決めていなくて。その時に友人からビジネスプランコンテストっていうのが毎年開催されていることを聞きました。まずは、そこを目指すのを目標にして、働きながら事業計画を作り始めました。BARを作りたい、屋上があればいいな、こんなイベントをやっていきたいって。そしたら本当に運がよく、そこで優秀賞をとることが出来ました。

それでぬか喜びしてしまって。ビジネスコンテストを勧めてくれた友達に物件探したの?と言われた時、ハッとしました。建物も見つけてないなんて、やるならやってちゃんとやりなさいってめっちゃ怒られたんですよ、いい大人が(笑)やっとエンジンがかかって、物件を探し始めました。物件として理想は、廃業したホテルと決めていましたね。自転車をなんとなく2人で回って探していたら、1時間半くらいたった頃だったかな、野田さんが「ここ、ここーーー!!」って。それが現在のBACCHUSですね(笑)早過ぎですよね。

見つけた当時は、「THE・廃墟」でした。ただ、廃業しているかもわからないのに、「勝手にここしかない!」って思いましたね。まず所有者を探したんですけれど、見つからなくて。それで諦め半分でストリートビューを見ていたら、なんと看板が貼られていたんですよ。その不動産屋さんに電話して実際に会っていただきました。不動産屋さんも驚いてましたけど。

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「甲府を盛り上げたい、外国人をもっと呼びたい」という想いに共感してくれたのか、そこの不動産屋さんと仲良くなりました。そこからは加速しましたね。家賃が決まった2週間後にはここに引っ越してきました。ちなみに、僕らが見つけた2週間後に駐車場にしないかという問い合わせが来たみたいです。僕らの話がなかったら、ここは駐車場になってたって考えると、タイミングってわからないものですよね。

そんなこんなで一昨年、2014年の12月に引っ越してきて、2015年の1月から住みながら改修を開始しました。

自分たちでリノベーションするっていうことに抵抗はなかったんですか?大変ですよね。
まさに仕事でこういう改造物件の現場監督をやっていたんですよ。物件が決まったのは嬉しかったんですが、建築会社での仕事がツラかったので、建物を見るのも、本当は嫌になっていました。「またあの仕事しなきゃいけないんだ」っていうのも思いましたね。でも、自分でやるのと仕事でやるのは全然違って。とても楽しかったんですよ。だから、現場監督の仕事経験が役に立った。

全部無駄じゃなかったって思えました。

さすがに自分たちだけでは大変だったので、Facebookで呼びかけて、「破壊&飲み会」っていうイベントを週末やっていました。壁紙をはがしたりとか、作業してもらう代わりに御礼でビール渡します!乾杯!という感じですね。最初の方は13時から始まって17時で作業終わって、18時から飲み会開始ですってやってたんですけど。全部で8回やったのかな。6回目くらいから慣れてきて、13時からやって、たまに15時の休憩のときには今日はちょっと、飲みませんか?とかになったりもしたりして。飲み会のついでのリノベーションになっちゃったこともありましたね(笑)
でも、それで作業はとてもはかどりましたね。毎回来てくださる方もいて。中には、最終回には職人みたいになってた人もいました(笑)壁を叩いて、「吉田さん、この壁は下地がはいってませんよ」って言ったりしてました。ほんと、人の成長ってすごい(笑)

その方たちの力がなければ、結構改修もかなり大変だったってことですよね。
そうですね。本当に人の力ってすごいなと感じたんですけれど、仮に2人でやることが10日かかる。2人×10日で20日必要ですけど、でもその日に20人集まってしまえば、1日で済んでしまう。コンスタントに15人~20人くらい来てくださっていたので、本当に助かりましたね。

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そして、2015年8月22日にオープンされたわけですね。
はい、厳密に言えば、8月8日にプレオープン、8月22日に本オープンをしました。
オープンの日は餅投げもやりました。周辺住民の子どもたちもたくさん来てくれて。有り難いことに地元のテレビ番組にも多数取り上げていただきました。

オープンされて数ヶ月程経っていますがが、宿泊客はどんな方が多いですか
全体の3割から4割は外国の方ですね。予想以上に外国人が多いなという印象です。あとは、BARラウンジとかは宿泊しない方も利用できるので、たくさんの地元の方にも来ていただいています。

進化するゲストハウス 屋上はキャンプやビアガーデンも

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では最後に、今後の予定や目標などを教えてください。
現在、世界約20カ国の方々にご宿泊に来ていただいています。

僕達の目標だった、この甲府の地で文化の交流と、山梨の魅力を世界へ発信することが、毎日毎晩、この場所で実現されているのは嬉しいですね。
屋上は2016年3月にオープン予定なんですよ(2016年1月取材時)。この屋上で夏にキャンプできたり、ビアガーデンなんかもやろうと思っています。ウッドデッキと芝生をはって。まさに甲府のど真ん中でキャンプができる。屋上でもイベントやりたいですね。ただのイベントではなくて、人と人とが繋がるようなものを。

一般的にゲストハウスのイメージって「旅人」だけが集まるっていう印象が強いと思うんですけど、僕らは違う。地元の甲府の人も一緒に集まれる場所となっていると思います。
今後も、僕らなりのやり方で、宿の魅力、山梨の魅力を発信していきたい。
         
BACCHUSを、そんな「憩いの場」にしたいと思っています。

吉田さん、貴重なお話、ありがとうございました!!

吉田 陽祐(よしだ ようすけ)
福島県福島市出身。高校卒業後、山梨大学工学部入学。在学時代に様々な人との出会いを通じ、山梨の魅力を存分に味わう。また、長期休暇を利用し、海外へ単身バックパッカーとして、東南アジアを中心に、中国、ニューヨークへ渡航。旅先でのゲストハウスの魅力、出会いの場としての重要性を実感。外国人とのコミュニケーションを通じ、日常英会話能力を身につける。大学卒業後、東京の建築事務所で4年間勤務後、山梨の魅力を世界に発信する仕事がしたいと思い、山梨にIターン、ゲストハウス開業を決意。

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Kokoro
Kokoro

大学時代を山梨県で過ごす。現在は東京在住。思考や行動の原点が山梨で過ごした大学時代にあり、いつか恩返しができたら。山梨の魅力を私なりにお伝えできればと思っています。

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