山梨ボードゲーム研究会「きゅうらく」に遊びに行ってきた!
ボードゲームを楽しむ会「きゅうらく」
山梨県内でボードゲーム愛好家が集まっているという情報をキャッチし、MUJINKAIの女性ライターとともに取材に向かいました。
平成27年12月6日、甲府駅北口の徒歩3分の地にある山梨県立図書館にて山梨ボードゲーム研究会「きゅうらく」に参加させていただきました。
平成24年に新築移転された、山梨県立図書館は、図書館としてのサービスはもちろんのこと、レンタルスペース(交流スペース)や喫茶店といった多目的機能を備えています。
午後2時、会場の山梨県立図書館に到着すると、約20名の参加者が集まっていました。会場の交流スペースはガラス張りとなっていて、中の様子を伺うことができました。笑顔や頭を抱えている人など、楽しそうな雰囲気が入る前から伝わってきました。
私たちは、ボードゲームを体験したことがないため、不安と緊張で胸が張り裂けそうな思いのままドアを開けました。
中に入ると、参加者の方々が手招きをしてくれて、6人グループの席に加えていただきました。
参加者 「どんなゲームが好きですか?」
-ボードゲームが始めてなので、皆さんの足手まといになってしまうかもしれません。
参加者 「初心者の方でも安心して楽しめるゲームがたくさんありますよ!」
会話が弾むボードゲームたち
コヨーテ
自分のカードを頭の上に置き、見ることができません。対戦相手のカードを見て、すべてのカードの合計を推測して、合計を宣言します。各対戦相手の宣言や表情から、自分の持ち札を含めた合計を宣言します。宣言が合計より低いと勝ち残ることができます。
前の人の宣言は、私が考えている数字より大きい!思わず「コヨーテ!!」と叫びました。
ワンナイト人狼
テレビやSNSで芸能人が遊んでいる様子を見る人も多いと思います。話題の人狼。ワンナイト人狼は、少人数かつ短時間でも出来るように改良されたボードゲームです。
村人を狼から救うために、騙し合い、信頼関係、推理など、心理戦となるゲームです。
夜になりました。狼が目覚めます。
「私を疑っているの?」「発言が狼のような気がするな」など、MUJINKAIのライター同士でも心理戦が繰り広げられました。
ワンナイト人狼[海外版]
誰でもわかるように、英語の表記を翻訳した案内が記載されていました。
PAIRS
点数を取らないようにするカードゲームです。プレーヤーの前に1枚のカードが置かれます。順番が来たらカードを引くか引かないか決めます。引いた場合、自分の前に置かれているカードと同じカードが出たら、1枚を点数として引き取ります。持っていないカードだった場合、そのまま並べます。カードを引かない場合、出ているカードから一番低い数字1枚を引き取り点数とします。誰かがカードを引き取ったら、引き取ったカード以外はすべて捨て札にして、新しくカードを配りなおします。規定の点数になったプレーヤーが負けとなるゲームです。
危険だと感じながらも、覚悟を決めてカードを引く瞬間のスリルは快感でした。
お邪魔者
金鉱堀がお邪魔者の妨害に負けずに金塊を掘り当てるゲーム。スタートの際、誰がどちらの役か分かりません。ゲームを進めていきながら、お邪魔者を判断します。ゴールカードは3枚あって、そのうちの1枚だけに金塊が隠されています。手札にある通路カードとアイテムを使用して、金鉱堀が金塊を目指していきます。
私は、誰が仲間であるか想像しながら、手持ちのカードを選択していきました。6人中、2人がお邪魔者ですが、ゴール地点で推理した仲間が違ったことが判明し、負けたことが分かり驚きました。チームの連携に加えて、相手の動きを注視しながら、心理を読み解くことがゲームの面白さでした。
メキシカントレイン
ドミノゲーム。ドミノのパイを同じ数字をつないでゆき、いち早くパイを出しきった人が勝ちとなるゲームです。
パイに記載された数字を合わせていきます。
小さい汽車が進んでいきますが、女性から「かわいい」なんて声も聞こえてきそうです。
インフェルノ
毎回指定される色と数のどちらかに相当するカードを出し続けます。出せなくなったプレーヤーに失点を押し付けるゲーム。限界まで出した結果、良い方向に結び付かないことがあります。タイミングが難しく、大量失点などがあるゲームです。
最終的に思いがけない結果につながることもありました。
あてっこついたて
問題とヒントを出しあうクイズゲームです。カードに問題を書き、他の人へ渡します。自分の前に置かれた「ついたて」の記載内容を考えながら、質問を繰り返して当てるゲームです。
お題に沿って、思いついたものを記載します。
自分の書いたボードを他のプレーヤーに見えないように置きます。
質問には、参加者がジェスチャーで答えます。「質問の答えは、はい・いいえ・分からない」自然に笑みがこぼれてくる遊びです。
一家に一台のボードゲームを目指して
イベント後、きゅうらくを運営している三枝さんや参加者のあきらさん、武井さん(以下、きゅうらく)にお話しを伺いました。
主催者の三枝(HN:机龍之介)さん。
-ボードゲームを始めたきっかけを教えてください。
きゅうらく 「数十年前、フンタというスイス銀行に溜め込んだ金額が一番多いプレーヤーが勝利するボードゲームを購入しました。しかし、当時は、テーブルトークRPGを楽しむ仲間がいましたが、ボードゲームを持っていること自体が珍しく、徐々に遊ぶ回数が減り、いつの間にか棚の奥にしまってしまいました」
-ファミコンなどのテレビゲームが普及し始めた頃、遊ばなくなったゲームが多くありましたね。
きゅうらく 「ファミコンが普及し、テレビゲーム業界はめまぐるしい変化を遂げています。現在のテレビゲームは、1本作るのに、莫大な費用を投資し、開発しているそうです。しかし、ボードゲームは、素材とルールが重視される世界です。ダイスを使ったゲームなど、シンプルですが、ゲーム本来の遊びを楽しむことができます」
-デジタルとアナログの世界の競争でもありますね。
きゅうらく「たしかにそうですね。アナログであるボードゲームは、自ら作ってしまう人もいます。それらを実際に触れることのできるゲームマーケット。毎年、来場者が増加傾向となっていて、今年は約9,500人を超えたそうです。売れているゲームは、よく考え作られていると感じます。中には、日本で作られたゲームを海外から買いにくる人もいます」
-日本の長い歴史で作られた囲碁や将棋、海外のカードゲームのウノ、人生ゲームなどが一般的に知られていると思いますが、他にも多くのゲームが開発されているのですね。
きゅうらく 「代表的な国として、ドイツでうまれたボードゲームがあります。その特徴は、子供から大人まで楽しむことができる、いわゆるファミリーゲーム。その魅力は今でも十分に楽しむことができると思っています」
-三枝さんが棚の奥にしまってしまったフンタも、今の子供たちに遊んでもらいたいですね。
きゅうらく 「はい。きゅうらくをはじめたきっかけにもつながりますが、私たちの持っているボードゲームを、誰でも気軽に参加(オープン会)してもらいたいという気持ちで立ち上げました」
-きゅうらくという名前の由来も何か意味が込められているのですか。
きゅうらく 「きゅうらくの名前の由来は、荘子の言葉、古之得道者 窮亦楽 通亦楽 所楽非窮通也(真実の道を体得した古人は、逆境におちこんだ場合も楽しんでおり、順調に成功した場合も楽しんでいた。楽しむところは、逆境や順調といった世俗の関心をこえていたのだ)を引用しました。逆境、順調もゲームです。ゲームを堪能しようという思いを込めました。さらに、ゲーム自体を楽しんでもらいたいと考えています。日本人は、ルールのシステムを楽しむ傾向がありますが、ゲームの直感や勝負の中の心理などの魅力を体感してもらいたいです。会話のコミュニケーションと同様、ゲームは頭が沸騰し、自分のジャンルで得意不得意が分かります。その状況も一つの楽しみとして遊んでもらいたいです」
-本日、私たちもさまざまなゲームを体験させていただきました。コヨーテなど、短時間で進めていく上でのルールやコツをつかむことのできるゲームもありました。
きゅうらく 「そうです。対象年齢が低く設定されているゲームについて、子供だけでなく大人も楽しむことができます。一度、ボードゲームを体感していただければ、魅力を実感できると思います」
-大人以上に子供の方が、ゲームのルールを理解するのが早そうですね。
きゅうらく 「子供同士の勝負は、勝つためにさまざまな方法を考えていっているようです。スポーツの分野では、試合に負けた時の悔しさを実感することで、自らの弱点を理解し、克服していきます。ボードゲームの世界においても、ルールを理解し戦略を学びながら、勝負を進めていくことができます。さらに、地域によって異なるルール作りが出来上がり、子供たちなりに楽しんでいるようです」
-トランプを使ったゲーム大富豪のように地域によって異なるルールは、ご当地の魅力にもつながりそうですね。さらに、ボードゲームは、幅広い年齢層が集まるツールとして、期待されるのではないでしょうか。
きゅうらく 「私たち以外にも、山梨県内では、女性の主催者が中心となり、ボードゲームと食事会を合わせて、地域活性化の一環として取り組みをしている団体もあります」
-ユニークなイベントですね。新聞などにも掲載されたと伺いましたが、山梨県内のボードゲーム事情については、いかがでしょうか。
きゅうらく 「都心と比べて、山梨県は圧倒的にボードゲームの認知度が低いです。都心では、ボードゲームを扱うお店や専門店が続々と出店し、多くの方が楽しんでいると聞いています。しかし、山梨県においては、遊ぶ場所がなく、ゲームの参加者を募るためには、図書館や公民館などの公共施設を利用せざるを得ない状況です」
-遊ぶためのハード対策として、山梨県内にボードゲームカフェがオープンされない理由があるのでしょうか。
きゅうらく 「一番には、人口的な問題があると思います。しかし、山梨県民は、横のつながりを大切にしています。その文化からボードゲームが普及していくと思います」
-本日、参加させていただきましたが、きゅうらくが、誰でも参加できる解放的な空間だと感じました。運営方法など、何か心掛けている点はありますか
きゅうらく 「山梨県立図書館がガラス張りの会場ということで、周囲で中を覗き込む方がたくさんいます。本日の開催でも子供連れの母親を手招きし、参加していただきました。過去には、障害がある子供を招待し、参加者とのコミュニケーションを図るきっかけづくりになったことがあります。家族、友人などでボードゲームを囲むことで、会話がうまれて、地域のコミュニティーも高まると期待されています」
-医療や子育て支援など、皆さんの活躍が期待されますね。しかし、良い点がある一方、運営するために大変な苦労があると思いますがいかがでしょうか。
きゅうらく 「はい。皆さんも体験していただき感じたと思いますが、ボードゲームのルールは、難しくありません。常に、ルール説明のスキルを課題とし、より分かりやすく、簡潔に伝えることの難しさを感じています。1つのゲームが終了し、感想を質問します。面白かったと言ってくれますが、面白かった以外の言葉がでない場合、実際にルールを理解していただいたのか不安になることがあります。特に、女性はルールを直観で判断し、結果にこだわる方が多いと感じます。ゲームを始めるための第一が難しいですね」
-その女性におすすめするゲームなどありますか。
きゅうらく 「子供と女性が楽しめるごきぶりボーカーがおすすめです。ボードゲームは、男性の比率が高いですが、女性にも是非体験していただきたいと思います。本日の会場でも周りで見ていた親子を手招きして、参加していただきました。女の子でしたが、楽しんでいました」
-最後に、夢をお聞かせください。
きゅうらく 「一家に一台、ボードゲームがあるような世の中にしてみたいです。食事の後、家族が同じテーブルに集まり、同じ時間を共有するきっかけになれば良いと思います。そのために、ご高齢の方が参加されているダンス・エクササイズ教室と同じように、行政が主体となり、ボードゲーム大会が実施されることなどが一つの方向性だと考えています。さらに、研修時のアイスブレイクや保育園など教育分野でもボードゲームを活用できると考えています」
地域のかかえる問題解決にむけて
今回の取材を通じて、ボードゲームの奥深さを知ることができました。ボードゲームとは、基本的にプレーヤーが実際に盤を囲んで楽しむゲームです。最も古いボードゲームと推定されているのは、エジプトの紀元前3500年ころの遺跡および紀元前3100年ころの遺跡から発見されたセネトだそうです。(ウィキペディアで調べました)
長い歴史があるボードゲーム。その歴史を大切していく必要があるのではないでしょうか。
山梨県内は、パチンコ屋などの娯楽が浸透しています。確かに、金銭をかけて刺激を求める感覚も大切であると考えています。しかし、そこには会話がうまれないことも事実です。ボードゲームは、一つの机に人が集まり、勝負をします。時には、相手の心理やゲームの流れを推測し、プレーヤー同士が協力する場面があります。勝負の中から自然と会話がうまれます。
ボードゲームは、勘案して作られた物であり、幅広い年齢の方々が遊べるツールだと感じました。きゅうらくの皆さんのインタビューにもあったように、地域貢献や福祉の分野において、ボードゲームを取り入れることで、問題や課題点の解決に向けて取り組めると考えるようになりました。そのためには、地域・行政。商店が一体となり、積極的にボードゲームを取り入れ体験することが、さまざまな山梨県内の問題解決に向けた、第一歩になるのではないでしょうか。