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アートで溢れた元銭湯の2日間

COLUMN 2017.10.28
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甲府市中心部に位置する廃業した元銭湯を舞台に、9月30日、10月1日の2日間限りの現代アートの展覧会が開催された。『Flowing out』と題された展覧会には、「雨垂れ石を穿つ」という諺のように、小さなイベントでも継続的に開催していくことで甲府の街に現代アートが根付き、広がるきっかけになってほしいとの主催者の思いが込められている。

竹の湯外観
Photo: Mina Ino

主催者は共に甲府市在住の女性である堀切春水さんと五味文子さんの2名だ。共に現代アートを愛し、美術館や国際芸術祭での勤務経験がある堀切さんと、地方で現代アートの芸術祭の企画運営に携わった経験のある五味さんが意気投合し、昨冬から企画を暖めてきた。
彼女たちは銭湯特有の構造である「男湯」と「女湯」という二つの部屋をそれぞれキュレーションすることで、元銭湯の「竹の湯」に息を吹き込むような空間を創出した。

男湯は堀切さんのキュレーションによって、映像作家のぬQの作品で構成された。過去にアシスタント・ディレクターを務めたあいちトリエンナーレでぬQの作品を知った堀切さんは、作中には水の描写が登場しないにも関わらず、流れる水を想起させるぬQのスピード感ある映像作品が銭湯という空間に合うと閃いたという。代表作《ニュ〜東京音頭》をはじめ、映像作品は湯船に投影され、その特異な作品世界を際立たせていた。(写真①②)

①男湯 ぬQ展示風景
②男湯 ぬQ展示風景

さらにぬQの世界観を補完するような平面作品(作家曰く『クオリティの高い作品』)たちは、女の子が憧れるようなキラキラなものの表層をそのまま作品化し、サウナや脱衣所を利用して展示。作家と同世代にあたる著者にとっても、幼少期に愛読した少女漫画の世界観を彷彿とさせ、そのファンシーな昭和感は銭湯という空間との親和性を感じさせるものであった。(写真③④)

③男湯 ぬQ展示風景
photo: nijigumo
④男湯 ぬQ展示風景
photo: nijigumo

一方、女湯は五味さんによって現代工芸の展示空間となり、染色や陶芸、フェルトアートなど個性豊かな作家たちの作品がところ狭しと並べられていた。湯船をアーティストごとの区画にし、脱衣所まで拡張された展示スペースは、来場者とアーティストとの交流の場としても機能していた。展示品がそのまま購入できるというシステムも、かつてこうふのまちの芸術祭の一環としてオークションを実施したことのある五味さんならでは展開であった。

女湯 展示風景
photo: nijigumo

鍼灸師としての顔も持つ五味さんは、鍼灸院とアートスペースが融合した施設のオープンを目指している。ときに人に癒しを与えるアートや、「世話する人」を語源に持つキュレーションについて考えるとき、五味さんのアイデアはとても興味深い。

女湯 脱衣所マルシェ

2日間のうちに300人超の来場者という大盛況のうちに幕を閉じた本展覧会であるが、特筆すべきは実に多くの地域住民があらゆる形で展覧会に携わったことである。甲府で唯一のアーティスト・イン・レジデンスであるAIRYのスタッフやアーティストの他、近隣住民など普段は現代アートに関心を示さない高齢層まで、広範囲に及んだ参加者こそ何よりの収穫だったかもしれない。

現在、全国各地で芸術を切り口にした地域おこしが盛んになっている。地方出身者として地域の魅力が再発見され、伝搬されることはとても嬉しく思うが、手段が目的と化したような虚しさを感じることがある。しかし、この「竹の湯」展は現代アートを愛する2人が、彼女たちなりのやり方で試行錯誤しながら周囲を巻き込み、結果として地域活性を促す方法論を提示した。甲府に蒔かれたばかりの種が今後どのように溢れていくか楽しみだ。

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